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【ラチエン通りストーリー(九話)】
超ローカルな、でも…ささやかな 昭和史を含む九話です。 茅ヶ崎市の南東部、 国道1号線(信号「松林中入口」)と 国道134号線(信号「菱沼海岸」)を 南北に結ぶ2キロ少しの道を 「ラチエン通り(どおり)」と呼びます。 一話◇ 異人館踏切… ラチエン通りがJRの線路と交差する 踏切を「異人館踏切」と呼ぶのは、 イギリス人のボールデンさんの屋敷が、 この近辺にあったからと言われて います(若松町にあった三階建ての 洋館がそれだと言います)。この踏切、 昭和40年ころ(パシフィックホテル 開業)までは車両は通行禁止でした。 二話◇ 桜道… そのころまでは、国道1号線から 異人館踏切までのラチエン通りの北の端、 「TOTO」の東側は、舗装もなく、春ともなれば桜のトンネルのようでした。 今では、桜道の名の元となった桜の木も多くが姿を消し、その名は若松町で 交わる東西の道の名称に変わり、バス停「桜道」に名残をとどめています。 (このごろは、茅ヶ崎では南北の道を”通り”、東西の道を”道”と呼びます) 三話◇ 貿易商ラチエン… この通りは、江戸時代には茅ヶ崎村と小和田村の境が、この道の位置に 引かれていたことから『郷境(さとざかい)』と呼ばれていました。 現在の「ラチエン通り」の名称は、昭和7年頃に松が丘の一画に別荘を建て たドイツ人の貿易商人ルドルフ・ラチエンさんにちなんでいます。 15000坪ほどの広大な別荘の前の通り(ラチエン通り)に120本の桜を植え たことからこの道は『桜道』とも呼ばれ、当時は見事だったといいます。 これらの由来は、縁者のお住いや別荘の跡地に近いところに設置された 小さな「名称由来板(看板)」に記されています。 昭和17~18年頃までは馬に乗って海岸まで散歩しているラチエンさんを 見かけたそうです。戦後、ラチエン邸は「キャプテンハウス」として接収され たそうです。 四話◇ 茅ヶ崎C31ハウス… ───1951年(昭和26年)11月25日に米中央諜報局キャノン機関に拉 致・監禁され行方不明になっていた鹿地亘は、一日本人の協力で帰宅し、 スパイを強要され拷問・脅迫を受けた事実を訴えた。アメリカ大使館は ソ連のスパイとして拘禁したと発表…(大原クロニカ「社会・労働運動大 年表」解説編から)─── この鹿地さんの監禁場所の一つが、米軍が接収して「クラブハウス」として 使用し、「茅ヶ崎C31ハウス」と呼んでいた建物でした。その建物は、菱沼 (当時の地名、今は松が丘)にあり、ラチエン通りから一本東の『神輿道 (みこしみち)』に面していました。この建物、元は中島知久平さん(中島 飛行機の創立者、鉄道相・軍需相などを歴任、A級戦犯容疑)の実弟・ 中島門吉さんの別荘跡でした。接収解除後は「旅館・松林荘」として使わ れました(市立図書館所蔵の最も古い昭和38年版の明細地図にも掲載 されています)。その入口は大きな門で閉ざされ、鬱蒼とした森に覆われ ていました。今は分譲されて住宅街になり、その東側は浜須賀中学校に なっています。また、ここに登場する一日本人とは、後に日本国民救援会 の会長となられた(今も在職中の)山田善二郎さんです。 (こんな田舎街にも米軍の占領や、米諜報機関の謀略の痕跡が残ってい たのです。参考文献、松本清張「日本の黒い霧」・山田善二郎「決断」) 五話◇ 烏帽子岩… 茅ヶ崎の道路は本当に曲がりくねっ ていて、南北方向で真っ直ぐなのは このラチエン通りただ一本です。 昭和20年代までは「TOTO」の 東側入口には「郷境」の塚があっ て、そこから烏帽子岩が見えたと いいます。 今でも「鉄砲道」から南に入れば お天気の良い日は烏帽子岩が 見通せます。海岸で見るよりぐん と大きく見えるから不思議です。 (烏帽子岩と占領米軍については、 collection 101で紹介済みです) 六話◇ ラチエン通りのシスター… サザンオールスターズの桑田佳祐 さんが、中学時代に好きだった同級 生を思って歌ったという ”ラチエン通りのシスター”。 今もご健在とのこと。 七話◇ 悠々として急げ… ラチエン通り沿い東海岸南の自宅跡 が「開高健記念館」になっています。 ─月曜日と木曜日の夕方になると 二キロ離れたところにある水泳教室へ行くために外出するが、それ以外は ほとんど家にたれこめたきりである(「国境の南」から)─。 昭和60年ころには、目深に帽子をかぶって若松町の「林水泳教室」に 通う姿をお見かけました。 八話◇ HOTEL PACIFIC… 長い期間、茅ヶ崎海岸のランドマークになっていた「パシフィックホテル」は ラチエン通りの南の端に建っていました(昭和40年落成、昭和63年営業 停止、平成10年解体)。上原謙さんが初代のオーナーでした。サザンの 45枚目のシングル”HOTEL PACIFIC”はこのホテルがイメージされています。 その跡地は、今は低層の南欧風のマンション「パシフィックガーデン」に 変わっています。 九話◇ 運転手泣かせ… そして今、この道は…メンチカツが売りのお肉やさん・地魚が自慢の魚屋 さん・ドラッグストアやCOOP(生協)旭ヶ丘店などでお買物をするおばさん たちと、サーフボードをキャリアーに乗っけたおにいさんたちや、大型犬を 連れたおねえさんたちで、ただでさえ狭い道がいつも雑然としています。 近くの自動車教習所の教官が「運転が難しいので、ラチエン通りはできれ ば避けるように」と教えているほどです。 by NO&MO
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| 2006-06-19 14:21
| 地元・身辺ねた
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